
「すきはな」のビジネスモデルと顧客ニーズ
「すきはな」のビジネスモデルと実態
このライブ感ある食のエンターテインメントを楽しむために、一号店の店舗面積は約76㎡、座席はカウンター席のみの15席で、各席ごとに電磁調理器機と蓄熱に優れた「鉄鍋」を設置しています。
滞在時間は1組当り30分、客単価は税込2500~3500円を想定しているため短時間でサービスが提供できるようにレイアウトやオペレーションは効率化を図り、工夫がなされています。
営業時間 は11:00〜23:00、ラストオーダーは22:30の設定です。
この設定の実現性を見てみましょう。
お客様が着席した後、メニューを見る、注文、調理、盛り付け、商品の提供、食事をする、食後に一服する一連の行動があり、それぞれに時間がかかります。
30分の滞在時間を実現するためには、まずは提供をするまでの時間が重要なのですが、実態はスタッフが一鍋に付きっ切りで調理、盛り付けして提供をするため、提供に時間がかかっていてなかなか食事にありつけません。
ターゲットのビジネスマンが求めるのは、”サクッとランチ”をすることなので、提供時間が長いことは致命傷になります。
食べるまでの時間を短縮するためには、お客様自身がすき焼きを焼くか、スタッフ数を増やすかのどちらかしかありません。
また、日本人とインバウンド客は6:4の比率を想定しているため、日本食に慣れていないインバウンド客に日本食を説明しながら30分で食事を済ませることは難しいのではないでしょうか。
さらに、新橋という立地上でビジネスマンの利用も見込んでいることから、単時間で食事ができることに加え、ランチの予算はワンコインから1000円以下が妥当と思われます。
消費者ニーズと「すきはな」のこだわり
「すきはな」のメニュー構成、価格設定や提供方法とお客様満足度などを見てみましょう。
牛丼チェーンで498円の牛丼や877円の牛すき鍋膳をカウンター席で食べることとは異なり、高品質の国産牛や和牛を専任スタッフが注文を受けて目の前で肉を焼き、割り下で味付けをして提供してくれます。
セットメニューの構成は、牛肉1枚(110グラム)、ご飯、生卵、味噌汁、お新香、卵かけご飯のお供、ミニソフトクリームでおかわりはご飯と味噌汁のみ一回まで。
価格設定は、牛すき焼きセットが1980円、2530円と3850円の三種。
滞在時間の設定は、先述の通り着席してから、食事後にミニソフトクリームを堪能し、お茶で締めて、席を離れるまでが30分。
店側がどんなに効率化をしたとしても、顧客が支払う金額と滞在時間を考えた時、滞在時間30分で想定客単価3000円前後でどれだけの価値、いわゆるコスパを感じ満足してもらえるかが、重要な要素です。
また、一般的に満腹感を感じるまでの時間は、食事を始めてから約15~20分と言われており、脳の「満腹中枢」が刺激されるまでにかかる時間を指しています。
ここで言う満足度とは、顧客が商品やサービスに支払う対価で価格に見合った品質や品数であり、それを満足と感じるために必要な時間も含まれます。
高品質の肉を堪能し、満足に必要な商品と品数、そして、満足を感じる時間は30分で足りるのでしょうか。
消費者の求めるコスパは他店での経験と比較し判断されるので、この食事体験を通じて、また来店したいと思ってもらえるような満足を与えることが重要になります。
◆コスパとは:コストパフォーマンス(cost performance[英])の略で、支払った費用に対する効果や満足度、つまり「費用対効果」を意味する言葉です。

