【“休む恐怖”を“成長の機会”へ変える。2026年、店舗経営の新常識】
深刻な人手不足を背景に広がる正月休業。本書では最新の休業動向を紐解き、タイミー等のスキマバイト活用や年末の予約販売へのシフトなど、キャッシュフローを維持しながら休業を実現する具体策を提示します。従業員を大切にしつつ利益を最大化する、地域から応援される店作りのヒントがここにあります。
2026年、元日・三が日の風景が変わる
かつて、小売業や飲食業にとってお正月は「一年で最大の稼ぎ時」でした。元日の初売り、福袋、おせち料理の引き渡し、親戚が集まる席でのオードブルや刺身、惣菜の需要……。駐車場が満車になり、店内が混雑する様子は、活気ある店舗の象徴でもありました。
しかし、2026年のお正月、その光景は劇的に変わりつつあります。大手百貨店やスーパー、有名外食チェーンが相次いで「元日・三が日の休業」を表明しています。
「お客様が来るのに店を閉めるなんて、売上を捨てるようなものだ」 「競合他社が営業しているのに、うちだけ休んで大丈夫なのか?」
そんな不安を抱える店舗経営者や店長も多いでしょう。しかし、今の時代、無理な営業を続けることこそが、店舗の「閉店」を早めるリスクになりかねないのです。本記事では、最新の正月休業動向を分析し、人手不足時代を生き抜くための経営判断について解説します。
なぜ今、正月休業が急速に広がっているのか?
ここ数年、お正月の休業が増えている背景には、単なる「働き方改革」のムードではない、構造的な問題が潜んでいます。
なぜここ数年お正月の休業が増えているのですか?
最大の理由は、深刻すぎる「人手不足」と「従業員の意識変化」です。かつては「正月手当」を積めば人員を確保できましたが、現在は「お金よりも休み(家族との時間)」を重視するスタッフが増えています。
特に年末年始は、物流や食材の確保も困難になり、オペレーション負荷が跳ね上がります。無理に営業を強行した結果、従業員の離職を招き、最悪の場合「人手不足倒産」に追い込まれるリスクを回避するため、戦略的に休業を選択する企業が増えているのです。
実際に、大手スーパーのライフコーポレーションやサミット、あるいはイトーヨーカドーといった企業が元日や三が日の休業を定着させています。これらは「従業員の心身の守り」を優先した決断であり、同時にDX(デジタルトランスフォーメーション)によるネットスーパーの活用や、年末の事前予約へのシフトによって、売上を平準化させる戦略へと舵を切っています。
「休む恐怖」の正体は、売上減少とキャッシュフロー悪化
店舗経営者が正月休業に踏み切れない最大の壁は、「キャッシュフロー(資金繰り)」への不安です。
- 日銭が止まる恐怖: 売上がゼロになっても、家賃、リース料、借入返済、光熱費の基本料金、そして従業員の給与支払いは止まりません。
- 仕入れ資金の圧迫: 年末年始は高単価な食材(カニ、ブリ、牛肉など)の仕入れが集中し、キャッシュが一時的に大きく流出します。
- 機会損失: 正月用品(餅、酒、飲料、食料品、日用品)の需要を競合に奪われることへの焦燥感。
しかし、冷静に収支をシミュレーションしてみてください。元日に無理に営業して、割増賃金(正月手当)を支払い、高騰する物流費を負担した結果、残る利益はどれほどでしょうか?
むしろ、赤字に近い利益のために「将来の店舗を支える人財(従業員)」の心と体を消耗させていませんか?


