【この記事で分かること】
秋商戦を制し、年末商戦に繋げる。客数・客単価を増やすための販促戦略
10月の販促活動に焦点を当て、顧客をリピーターやファンへと育成する戦略を解説します。客数アップ(新規顧客獲得、同伴者増加)と客単価アップ(販売点数増加、販売単価増加)を目的とした具体的なアイデアを、ライブ感・パーソナル・スタッフ教育の3つの視点から紹介。成功事例も交え、11月以降の売上向上に繋がる計画立案を支援します。
10月は「リピーター」作りの黄金期
9月のシルバーウィークが終わり、秋の行楽シーズンが本格化する10月。涼しい気候となり、人々の外出や消費活動が活発になるこの時期は、単に新規顧客を集めるだけでなく、一度来店したお客様を「ファン」に変え、リピーターを育てる絶好のチャンスです。
本記事では、店舗経営者や店長の皆さんが10月の販促活動で成功するための戦略を解説します。9月でまいた集客の種を確実に刈り取り、次のステップである「顧客のファン化」へと繋げるための具体的なヒントと、最新の事例を織り交ぜてご紹介します。
10月を制する鍵は「顧客のファン化」
9月は「秋商戦のスタートダッシュ」をテーマに、新規顧客獲得に焦点を当てた販促戦略を解説しました。10月は、その成果を最大化し、売上の安定とブランド力の向上に繋げるための重要なフェーズです。
売上を構成する基本要素、売上の公式は以下のように極めてシンプルです。
売上=客数×客単価
すなわち売上を増大させるためには、客数を上げるか、客単価を上げるかの二つの方法しかありません。これらの要素を分解し、売上を向上させるための具体的な施策については、『【最新版】店長マニュアル 2-3.損益管理(実践編)|数字を利益に変える、「儲かる」店舗の損益管理術』で詳しく解説しています。
また、「リピート顧客は新規顧客の5倍の売上をもたらす」という「1:5の法則」は、店舗経営の基本中の基本。目先の売上だけでなく、長期的な視点で顧客との関係を築くことが、厳しい競争を生き抜く鍵となります。
10月はハロウィンやスポーツイベントなど、消費者との接点を増やしやすいイベントが豊富です。これらの機会を最大限に活用し、顧客とのエンゲージメント(繋がり)を深めていきましょう。
消費行動のピークを掴む!10月の市場トレンド
10月は、夏の暑さから解放され、人々の行動範囲が広がる時期です。この季節特有の消費トレンドを理解することが、効果的な販促戦略の第一歩となります。
イベント | 消費者心理と行動の変化 | ターゲット層 |
---|---|---|
秋の行楽 | 週末や連休を利用した旅行、レジャーの計画が活発化。アウトドアグッズ、レジャー用品、テイクアウトグルメへの需要が増加。 | ファミリー、カップル、若者 |
ハロウィン | 友人や家族とのパーティー需要が高まる。仮装グッズ、パーティー用品、ホームデコレーション、限定スイーツの購買が増加。 | 10代~30代、ファミリー |
スポーツの秋 | 運動会やスポーツ観戦など、スポーツ関連の活動が盛んに。スポーツウェア、サプリメント、応援グッズなどの需要が増加。 | ファミリー、スポーツ愛好家 |
インドア需要 | 涼しくなり、家で過ごす時間が増える。読書、映画鑑賞、ゲームなど、自宅での時間を豊かにする商品への関心が高まる。 | シニア層、ファミリー、一人暮らし |
季節の変わり目 | 気温の変化により、衣替えや健康管理への関心が高まる。秋物衣料、寝具、暖房器具、風邪予防グッズなどの需要が増加。 | 全世代 |
これらのトレンドを分析することで、自店がアプローチすべき顧客層と、提供すべき商品やサービスが見えてきます。
ファン化を加速させる「3つの販促戦略」と「販促アイデア15選」
10月の販促では、顧客の「楽しい体験」と「満足感」を最大化することが重要です。ここでは、具体的な3つの戦略を提案します。
顧客体験をデザインする「ライブ感」戦略
1. テーマ性のあるイベント企画
ハロウィン仮装コンテスト、秋の収穫祭、スポーツ観戦パブリックビューイングなど、参加型のイベントを企画します。これにより、顧客は単なる買い物客ではなく、「イベントを楽しむ参加者」となり、お店への愛着が深まります。同伴者数を増やすことで、客数アップも狙うことができます。
2. 新商品の試食・試飲、新作試着会などの実施
新規顧客獲得を狙う新商品・サービスの「体験会」を実施することで、顧客は商品の価値を五感で感じることができ、購買へのハードルが下がります。
3. SNSとの連動
イベントの様子をリアルタイムでSNSに投稿し、顧客にも「#(お店の名前)」でシェアを促します。UGC(User Generated Content)を増やすことで、顧客自身がお店のファンであることを発信し、新規顧客を引き込む力となります。
4. ライブコマースの活用
SNSライブやECサイトでのライブ配信を通じて、スタッフが商品を魅力的に紹介します。「店長おすすめのハロウィンレシピ」や「秋の最新ファッション着回し術」など、ただ商品を並べるだけでなく、使い方や楽しみ方を提案することで、顧客の購買意欲を高め、販売点数のアップを狙いましょう。
5.「1人1つ買うともう一つ無料」BOGO (Buy one, get one free) の導入
これは「ライブ感」戦略とも密接に関わる施策です。商品やサービスを1つ購入すると、もう1つ無料で提供するというキャンペーンを実施します。これにより、顧客は「お得感」を感じ、友人や家族を誘って来店する動機が生まれます。結果として、客単価向上だけでなく、同伴者という新たな顧客の獲得にも繋がります。特に、季節限定商品や新規サービスに適用すると、大きな話題を呼ぶ可能性があります。
顧客との絆を深める「パーソナル」戦略
6. パーソナライズされたDM配信
購買履歴や来店頻度に応じて、特別なクーポンや新商品情報をLINE公式アカウントやメールで配信します。「〇〇様だけに」というメッセージは、顧客の心を掴む強力なツールです。
7. 会員限定の特別なサービス
既存の会員やリピーターに対して、新作の先行予約、シークレットセール、特別イベントへの招待などを行います。これにより、顧客は「大切にされている」と感じ、ロイヤリティ(愛着)が向上します。
8. 顧客の声の見える化
顧客アンケートやSNSでのコメントに丁寧に返信し、改善点があれば即座に対応します。顧客の声がお店作りに反映されることを伝えることで、「この店を応援したい」という共感を生み出します。
9. アナログ施策の活用
クーポン券やチラシを新聞に折り込んだり、ポスティングや街頭で配布したりすることで、デジタルが苦手な層にもリーチできます。
10. 季節感を訴求したディスプレイと演出
ハロウィンの装飾や、秋らしい暖色系の照明を取り入れることで、店舗の雰囲気を一新し、顧客の五感に訴えかけます。
11. 友達紹介キャンペーンの導入
既存のお客様が友人を紹介すると、紹介者・友人の双方に特典(割引クーポンやポイントなど)を付与する仕組みを導入します。信頼できる人からの紹介は、新規顧客獲得において最も強力な手段の一つです。
12. 口コミ拡散を促す仕組み作り
SNSやレビューサイトでの口コミ投稿を促すキャンペーンを実施します。「投稿でプレゼント」「レビュー画面提示でドリンクサービス」など、特典を用意することで、積極的に情報発信してくれるお客様を増やします。
現場力を底上げする「スタッフ教育」戦略
13. おもてなしの徹底
混雑時にこそ笑顔を忘れず、顧客一人ひとりに丁寧な対応を心がけることが重要です。ゲストウォッチングによるホスピタリティの実現は、感謝の言葉や、一言の気遣いから具体的な形となります。特に「目配り」「気配り」「心配り」の三配りを意識することで、より質の高いおもてなしに繋がります。
・目配り: 視野を広く持ち、お客様の状況を素早く察知すること。
・気配り: お客様が次に何を求めているかを先読みし、行動すること。
・心配り: お客様の心に寄り添い、思いやりをもって接すること。
14. 商品知識と提案力の向上
顧客のニーズを引き出し、最適な商品を提案するためのスキルを磨きます。例えば、ハロウィンパーティーを計画しているお客様には、関連商品のクロスセルを提案するなど、一歩踏み込んだ接客を実践します。
15. チームワーク強化
スタッフ同士が連携し、スムーズなオペレーションを実現するためのトレーニングを定期的に行います。チームで売上目標を追うコンテストや、成功体験の共有会などを開催することで、スタッフのモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
- クーポン券配布・回収コンテスト: クーポン券の配布枚数や、実際に使用された回収率を競うコンテスト。配布するだけでなく、再来店に繋げる接客の工夫が重要になります。
- おすすめ販売コンテスト: 従業員がお客様に「プラス1品」を推奨する「推奨販売」を推進するコンテスト。客単価アップだけでなく、従業員がお客様に最適な商品を提案する姿勢が身につき、結果として顧客満足度を向上させることができます。推奨販売の4大原則は以下の通りです。
1. お客様満足度の向上: お客様のニーズに合った商品を提案することで、満足度を高め、固定客化を図る。
2. 買い忘れの防止: 関連商品を提案することで、お客様の買い忘れを防ぐ。
3. 商品、サービスの認知: 新商品や人気商品をおすすめすることで、認知を広げ、追加購入や再来店につなげる。
4. 客単価アップ: お客様にとって価値のある提案をすることで、自然な形で客単価を向上させる。
成功事例に学ぶ!顧客をファンに変える仕掛け
ここでは、実際に顧客のファン化に成功した事例を5つご紹介します。
- 事例1:地域密着型ベーカリー「ハロウィン限定!親子パン作り教室」
単にハロウィン限定パンを販売するだけでなく、親子で参加できるワークショップを開催。SNSで告知し、参加者の写真投稿を促すことで、新規の親子連れを多数集客しました。子どもたちが作ったパンを「自慢の作品」としてSNSで発信することで、その家族は自然とお店のファンとなりました。
- 事例2:セレクトショップ「パーソナルスタイリング相談会」
秋物新作が入荷するタイミングで、LINE公式アカウントの友だち限定で予約制のパーソナルスタイリング相談会を実施。スタッフが顧客一人ひとりの好みに合わせたコーディネートを提案することで、「自分のことを理解してくれる店」という強い信頼感を構築し、客単価の向上とリピート購入に繋げました。
- 事例3:雑貨店「Instagramフォトコンテスト」
「#私の秋時間」をテーマに、自店の商品を使った写真の投稿を募るキャンペーンを開催。入賞者には豪華景品をプレゼントしました。この企画を通じて、多くのUGCが生まれ、お店の世界観が広まり、新規顧客へのリーチに成功しました。さらに、投稿してくれた顧客との間で、感謝のコメントを送るなど、エンゲージメントを深めることができました。
- 事例4:レストラン「来店記念日のサプライズ演出」
予約時に、お客様の記念日やお祝い(誕生日、結婚記念日、入学・卒業祝いなど)を聞き出し、当日にサプライズ演出(デザートプレート、記念撮影など)を提案・提供します。単なる食事の場から「特別な思い出の場所」へと価値を高めることで、顧客は強くお店を記憶し、SNSでの共有や口コミに繋がりやすくなります。
- 事例5:美容室「リピーター限定!ホームケア商品の定期便」
特定のヘアケア商品を定期購入してくれるお客様に、通常価格より安価で提供したり、限定サービス(トリートメント無料など)を付与したりする「定期便」を導入。これにより、顧客の来店頻度が上がり、長期的な売上を安定させると同時に、顧客は「自分に合った商品とサービスを継続的に利用できる」という安心感を得て、ロイヤリティが向上しました。
これらの事例からわかるのは、顧客に「自分にとって特別な店だ」と感じてもらうための仕掛けが、ファン化には不可欠なのです。
まとめ:11月へと繋がる販促計画を立てよう
10月は、秋商戦を本格化させ、年末商戦へと繋げるための重要なターニングポイントです。この月に「顧客のファン化」を成功させることで、11月の七五三や勤労感謝の日、そして年末のブラックフライデーやクリスマス商戦をより優位に進めることができます。
そのためには、
- 10月のイベントやトレンドを活かした「顧客体験」のデザイン
- 顧客一人ひとりに寄り添う「パーソナル」なアプローチ
- それを支える「現場力」の底上げ
この3つの戦略を組み合わせるて実施しましょう。
10月の販促カレンダー
10月の販促カレンダーを活用し、計画的な販促活動を進めましょう。以下からダウンロードして活用してください。

