
現場で使える!クレーム対応の注意点と応用テクニック
クレーム対応を誤ると、お客様の怒りを増幅させ、「応対不良」という二次クレームに発展しかねません。ここでは、現場で感情的にならず、スマートに対応するための原則と、応用テクニックを紹介します。
クレーム処理の「さしすせそ」
頭文字 | 言葉 | 意味 |
---|---|---|
さ | 最善を尽くし対処する | 状況を正確に把握し、お客様にとって最善の解決策を提示する。 |
し | 知ったかぶりをするな | 不明な点は正直に「確認します」と伝え、安易な回答を避ける。 |
す | するな議論をお客様とは | お客様の感情がエスカレートするのを防ぐため、事実関係の議論は避ける。 |
せ | 誠意をもって解決にあたれ | 心を込めた対応が、お客様の心を開く。 |
そ | 即刻、上司に報告 | 状況を迅速に共有し、チームで対応にあたる。 |
クレーム対応で絶対にやってはいけないこと
以下のNG行動は、お客様の不満を増大させ、トラブルを悪化させる原因となります。
- 相手の話を遮る:お客様の話を途中で遮ったり、言い訳をしたりすることは、不信感を招く最悪の行動です。
- 責任の所在を安易に認めない:お客様からのクレームが100%正しいとは限りません。安易に店舗の非を認めたり、保証の話をしたりするのは避けるべきです。まずは「不快な思いをさせてしまったこと」に焦点を当てて謝罪し、事実確認を冷静に行いましょう。
- 「できないこと」を安易に約束しない:お客様の怒りを鎮めようと、安易に「〇〇します」と、実現不可能な約束をしてはいけません。後から約束が守れないことが判明すると、お客様の信頼を完全に失い、さらなる大きなトラブルに発展します。
- 相手の間違いを指摘しない:お客様の誤解や勘違いが原因のクレームでも、直接的に「それは違います」と指摘してはいけません。相手の感情がさらに悪化し、こじれる可能性があります。あくまで「お詫び」と「丁寧な聞き取り」に徹し、お客様の気持ちに寄り添うことが大切です。
- 対応をたらい回しにしない:クレーム対応のたらい回しは、お客様の怒りを最も増幅させる行為です。担当者や部署をたらい回しにするのではなく、受け付けたスタッフが責任を持って対応を完結させる姿勢を見せましょう。
- 「誠意を見せろ」と言われたら:お客様が「誠意を見せろ」と漠然とした要求をしてきた場合、「誠意とは具体的にどのようなことでしょうか?」と質問を投げかけ、お客様が本当に求めているものを引き出しましょう。これにより、お客様は冷静になり、具体的な解決策を話し合う段階へと進めることができます。
感情的になったお客様を「鎮める」テクニック
感情的になっているお客様には、冷静さを保ちつつ、質問で状況と要望を丁寧に引き出すテクニックが有効です。
- NG例:安易な質問で解決策を丸投げしない:「いかがすればよろしいでしょうか」といった質問は、お客様に解決策を丸投げする印象を与え、不満を増幅させるため避けるべきです。
- OK例:質問で状況と要望を丁寧にくみ取る:お客様に寄り添いながら「何が問題で、どうしてご不快に感じられたのか」を具体的に伺う質問は、お客様を冷静にさせ、本当のニーズを引き出す効果があります。「差し支えなければ、どのような状況で〜」「具体的にどのような点で〜」といった質問を穏やかに行い、こちらが解決に向けて真剣に考えている姿勢を伝えましょう。
クレーム対応の5ステップ
クレーム対応には、感情的にならず、論理的に進めるための確固たる手順があります。以下の5ステップを理解し、現場で実践しましょう。
1. 傾聴とお詫び(心情理解):
・お客様の話を遮らず、最後まで耳を傾ける。
・「この度はご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません」と、まずは不快にさせたことに対し、心から謝罪する。
2. 事実確認:
・何が起きたのか、なぜお客様が怒っているのかを、お客様の話を注意深く聴き取って明確にする。
・お客様の話を要約して復唱し、「きちんと聞いている」という姿勢を示す。
3. 解決策・代替案の提示:
・事実が明らかになったら、お客様の希望を確認し、双方にとって最適な解決策を提案する。
・その場で解決できない場合は、今後の対応を丁寧に説明し、お客様の納得を得る。
4. 再発防止の約束:
・同じ問題を繰り返さないように、再発防止をお客様に明確に約束する。
・これにより、お客様は「この店は改善してくれる」と安心し、信頼感が向上する。
5. お詫びと感謝:
・解決策と再発防止策に同意が得られたら、改めてお詫びを伝えます。
・貴重な時間を使って問い合わせてくれたこと、そして指摘してくれたことへの感謝も伝えましょう。
この5ステップに沿って対応することで、お客様は単なる不満客から、店舗を応援してくれるファンへと変わっていくのです。
まとめ:クレーム管理は店舗を成長させる最高の機会
クレーム対応は、単なるマニュアルの実行ではなく、お客様の心に寄り添い、再発防止に向けた改善を続ける「店舗を成長させる最高の機会」です。店舗経営者や店長であるあなた自身が、クレームを成長の機会と捉えるマインドセットを持つことが、組織全体のクレーム対応力を引き上げます。
クレーム対応を通じて得られる知見は、店舗の運営改善、従業員の成長、そしてお客様との深い信頼関係構築に不可欠なものです。クレームを組織全体で共有し、解決策を仕組み化することで、あなたの店舗はさらなる高みへと飛躍できるでしょう。
これまでに習得したクレーム管理やその他のマネジメント知識の集大成として、次回の店長マニュアルでは、お客様と従業員に「安心」と「安全」という最大の価値を提供する「安全管理」を徹底解説します。クレーム管理で築いた信頼の基盤を、さらに強固なものにしていきましょう。

