【店舗防災】リスクマネジメント・危機管理マニュアル[防災の原点]防災の日に見る安心安全の原則[チェックリスト付]

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【この記事の概要】
 脅威から人と店を守る。防災・防犯を統合した、店舗経営のためのリスクマネジメント
 店舗経営における防災は、自然災害から人為的脅威までの包括的なリスクマネジメントであり、事業持続のための経営戦略です。関東大震災や千日デパート火災などの歴史的教訓が示す通り、人命の安全確保は経営者の最優先事項です。防災への真摯な取り組みは、顧客や社会からの信頼獲得、また従業員のエンゲージメント向上に繋がり、結果、事業の成長を促す「善循環」につながります。

この記事の目次

店舗経営とリスクマネジメント

 店舗経営におけるリスクマネジメントは、もはや「もしも」の備えではありません。それは、変化の激しい現代社会でビジネスを持続させていくための、不可欠な経営戦略そのものです。

安心安全の原則を歴史から学ぶ

 店舗経営の原則は、「安心安全無き所に、人は集まらない」という至極単純な真理にあります。これは、お客様とそこで働く従業員、すなわち「人」に対する最大の責任であり、過去の歴史がその重要性を証明しています。

1923年9月1日、日本の首都圏を襲った関東大震災。この未曽有の大災害をきっかけに、犠牲者を追悼し、災害への備えを喚起するため、政府は毎年9月1日を「防災の日」と定めました。

また、1972年には大阪・千日デパートで大規模な火災が発生し、118名もの尊い命が失われるという痛ましい事故が起こりました。

さらに、2021年には大阪・北新地でビル放火殺人事件が発生し、26名が亡くなるという、安全対策への意識が問われる痛ましい事件が起こりました。

これらの事例は、災害対策の不備がどれほど大きな人命被害につながるかを私たちに示しています。

「防災」の概念を再定義する

 関東大震災を契機に制定された「防災の日」が、国を挙げて自然災害への備えを促すものである一方、店舗経営における「防災」は、より広い概念として捉える必要があります。それは、単に地震や火災といった「偶発的な脅威(セーフティ)」への備えに留まらず、盗難や情報漏洩などの「人為的な脅威(セキュリティ)」にも包括的に対処することです。

店舗防災とは、これらの偶発的・人為的な脅威から人命と企業資産を保護し、企業の社会的信用とブランドイメージを向上させるための総合的な取り組みなのです。

これらの歴史的な教訓は、災害が人々の日常をいかに一変させるか、そして「人」の安全を守るための備えがいかに重要であるかを、今も私たちに問いかけています。

本連載では、これらの歴史的な教訓から学ぶべき「防災の原点」を理解していただいた上で、これから大雨対策や台風対策といった具体的な対策について解説していきます。

店舗防災とは何か?「ハザード」と「リスク」を理解する

 店舗経営における「防災」と聞いて、何を思い浮かべますか?

「土のうを積む」「消火器を設置する」といった物理的な備えをイメージする方が多いかもしれません。しかし、それらは店舗防災の一部に過ぎません。

防災の原点を理解するために、まずは「ハザード(Hazard)」と「リスク(Risk)」という二つの言葉を整理しておきましょう。

ハザード(Hazard)とは、「災害を引き起こす可能性のある事象そのもの」を指します。例えば、地震、台風、ゲリラ豪雨、火災、犯罪といったものです。これらは私たちの力で完全に防ぐことはできません。

一方、リスク(Risk)とは、「ハザードが引き起こす被害の可能性」です。「店舗が浸水するリスク」「従業員が負傷するリスク」「売上が減少するリスク」などがこれに該当します。このリスクは、私たちが適切な対策を講じることで、被害を減らしたり、コントロールしたりすることができます。

つまり、店舗防災の目的とは、「制御不能なハザードに対し、コントロール可能なリスクを最小化すること」と言えるでしょう。

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