「信頼して任せるが、信用はしない」権限委譲の原点
「業務任せられたこと」で一人前として認めてもらえたことが嬉しくて、ワクワクして寝付けなかった。翌朝に待ち受ける事態、、、
正社員として勤務を始めてから1ヶ月が経過した頃、店長から待望の指示があった。
「次のシフトから1人でお店を開けるのを任せるぞ!」
その時の店舗は新店オープンに向けて正社員が5名配属されている状況にあり、その中でようやくオープン業務を任せてもらえることは、一人前として認められることそのものと感じていた。周りの先輩からも励ましの声があった。
オープン業務そのものは先輩と毎日やっていたこともあり、不安もなかった。それよりも認めてもらえたことが嬉しくて前日はワクワクして寝付けなかったことを覚えている。
そのせいか、当日の朝はいつもより起きるのが遅かった。まあ慌てる時間でもないので普通どおり出かける準備をしてバイクに足をかけた。(当時は原チャリ*で通勤していた)
原チャリ*:正式名称は「原動機付自転車」。道路交通法では排気量50cc以下の原動機を備えた二輪車のことで、昭和に自転車のことを「チャリンコ」「チャリ」と呼んでいたことから、原動機付のチャリンコの俗称が「原チャリ」となった。
そんな日に限って道路が渋滞しており、思うように先に進むことができず、時計ばかりを気にしていた。
「やばい。遅刻そうだな。でも今日は1人オープンだし、慌てることもないか…」と焦る自分に言い聞かせながら先を急いだ。
お店に到着したのは出勤時間ピッタリ!なんとか遅刻せずにたどり着けてホッとした。
ユニフォームに着替えて、いつもどおりのオープン作業を進めていく。
ピザ生地の状態を確認して、トッピングをセッティングし、オーブンのスイッチを入れる。
金庫からドライバー用の釣り銭を出してそれぞれのバッグに入れる。
当日のシフトを見てメンバーの確認を行う。
オープン時間の20分前には全ての準備が整った。
あとはクルーの出勤を待つだけだ!
と思った。その時!
オープン業務も順調に終わりほっと一息したら…
バックヤードに積んであるピザボックスの上に人影を感じた。
「おまえ、出勤がギリギリだったな」店長の姿がそこにあった。
なんとお店に泊まり込んで、私の出勤と準備状況を確認していたのだった。
任せられたというルンルン気分で完璧に1人でオープン準備ができたと自賛していた気持ちが一気に引いていった。
店長も事情があって朝までお店にいたのかもしれない。クローズ業務にトラブルがあって遅くなり、帰る時間がもったいないと思ったのかもしれない。1人で任せたとはいえ、その責任から保険をかけて早めに出勤してくれたのかもしれない… 等々
いろんな想像と気持ちが交錯する中で思った…「やっぱり信頼されていなかったんだ」と。当時は思ったが、しかし、リーダとしてのあり方やリーダーシップのとり方、権限委譲とは「信頼して任せるが、信用はしない」ことであることを後々に知ることに…
オープン準備状況のフィードバックも特になく、問題なくちゃんと対応できたことに触れることもなく、それからは1人オープンを任せる日は無くなっていった。その時は、一瞬にしてモチベーションがダウンしてしまった。
浮き足立っていた自分は「一気にどん底に突き落とされる」思いだった。