店舗監査[会計と業務]のすすめ方 5.実務環境の背景監査「裏取り」

店舗監査 現金監査 金庫 不正 横領 着服 詐欺 偽装 改ざん 捏造 架空取引 循環取引 知能犯 出来事犯 確信犯 不正を働く従業員のタイプ 不正の特徴 不正の対処 取締役 監査役 内部監査

【この記事の概要】
 「真実は細部に宿る!」
 業務は人が行いますので、ミスや悪意の行動、その他宗教的勧誘や反社とのつながりによる問題など人の在り方で決まります。監査には、具体的な内容と監査員の実感も問われます。そのため、各店舗がどのような人で構成され、運用されて、どのような実務環境を作り出しているかを監査する必要があります。具体的には、素行、お金、問題を起こしそうな人の特定、顛末、特定の団体等の勧誘活動などと店舗や会社の弱点の裏通りと事実確認をして背景監査「裏通り」を行います。

この記事の目次

1.背景監査「裏通り」の必要性

 業務は人が行いますので、ミスや悪意の行動、その他宗教的勧誘や反社とのつながりによる問題など人の在り方で決まります。監査には、具体的な内容と監査員の実感も問われます。

そのため、各店舗がどのような人で構成され、運用されて、どのような実務環境を作り出しているかを監査する必要があります。

その際の視点は以下の3つです。

2.店舗実務監査の視点

その1 店長の素行を見る

 店長が店舗環境を決めるということから店長の人となりや能力そして行動特性を知りリスクの程度を把握することの重要性を把握することです。

店舗の責任者が店長ですのでルールを守るのも破るのも店長の権限でどうとでもなります。

ただし、本部で内部統制(牽制組織)を十分に整備・運用できており、店長がもし悪いことをした場合にトレーサビリテイー(追跡可能性)がしっかりしいて、かつ店長にも内部統制は破れない(悪いことをしたら必ず見つけられる仕組みが整備されている)と教育され徹底している場合は、監査マニュアルに従ったチェックをすれば足りますので、監査員は会社の内部統制の堅固さを事前情報で仕入れて店長の素行をチェックする必要があります。

その2 店舗や会社の弱点を見る

 「真実は細部に宿る」と言われます。組織の実態は最も弱いところに集約されますので、重要性が低くて日の当たらない業務を担当している人や部署へのインタビューで店舗の問題点を探ることが重要です。

昔『家政婦は見た!』というドラマがありましたが、家政婦のように弱い立場にある人はいじめられやすいので、ご主人様の悪弊をもろに受けるため最も弱点を把握しています。実際、私はコンサルテイングをする際にバックオフィスの女性に会社の問題点を聞いておりました。

そうすると会社の問題がそこに現れますので、面白いように問題点が分かりましたし、監査法人での人事評価では秘書にボスの評価を聞いていました。すると顧客への態度、上司への態度、部下への態度などが面白いようにわかり、本人が隠している実態を把握することが出来ました。

*『家政婦は見た!』:1980年代にテレビ朝日系の「土曜ワイド劇場」で放送されたテレビドラマシリーズ

その3 問題を起こしそうな人の特定

 休みがちであったり、素行が悪い人や逆に評判が良すぎる人が問題を起こしていないかを店長や弱い人(先ほどの第二であげた人)へのヒアリングを通して、問題を起こしそうな人を特定してその人の業務を重点的に調べることで問題を探しやすくします。

これはミスや盗難、データの改ざんなどは素行が悪い人や評判が高いことを利用して起こす可能性が高いのでそのような人に注目してみていくことが重要だからです。

3.店舗実務監査の具体的な実施項目と着眼点(店長編)

全体的実施項目 1.本部による当該店長のリスク把握状況の確認

(把握内容)

 本部本社が当該店長のリーダーシップ力やトラブル解決能力をどのように考えているかを事前にヒアリングすること。

当該店舗でどのようなミスやトラブルが発生して、どのような再発防止策が打たれたかを聞き出しておき、本部の当該店長への期待やリスクをどのように把握しているかを事前に知知った上で、実際に店長と話してその認識は正しいかどうか?認識違いはないかを確かめる。

(具体的に聞く内容)

① 過去一年で起きたミスやトラブル内容と顛末そして再発防止策

②内部統制上の欠陥や弱いところをどう把握しているかと具体的な対策等です。

(着眼点)

 本部が当該店長のリスク回避能力をどのように評価しているかを事前に知り、店長に実際会って話した感じを本部に報告する。本人の観察力やトラブル把握力そしてトラブル解消能力などを話の中から感じ取ることが大事です。

■全体的実施項目 2. 店長の評判を調べる

(内容)

 店長の働きぶりや仲間からの評判を聞いて本部の評価や監査員が感じた店長の実感が正しいかどうかを確かめます。

(具体的に聞く内容)

①データの改ざんやミスの隠蔽指示などの有無
②ノルマで苦しんでいる様子はないか
③服装や行動が派手になったり金遣いは荒くないか等です。

など。

(着眼点)

弱い立場の人は店長の歪みを受けたり、観察眼が鋭いため、内部統制を破れる可能性がある店長の不審な行動やそのきっかけに当たるような行動をとっていないか、弱い立場の人から聞き出して、問題の可能性を探ります。聞き出した内容は本部に伝えましょう。

4.店舗実務監査の具体的な実施項目と着眼点(店長以外編)

■全体的実施項目 1.内部統制の弱点部分の担当者の業務内容や差異があった場合の顛末の確認

(内容)

本部本社や店長から過去のミスやトラブルを聞き出すとともに、内部統制上の弱点がある業務を担当している人の業務内容やリスク回避の内容、そして差異やミス、トラブルがあった業務の顛末を調べて問題解決能力を検証します。

お金を扱う人や物を扱う人や会計記録をつける人はデータの改ざんや転売、自家使用などが可能であり共謀をしてつじつまを合わせることも可能です。

ですからリスクが高い仕事を担当している人がちゃんと正しく業務を行っているかを調べる必要があります。

(具体的内容)

①リスクが高い業務の担当者を聞き出す
②ミスや差異があった場合の顛末とそのトレーサビリテイーを追跡して正しく処理がされたことの確認を行う
③当該担当者の能力や誠実性を実感する

など。

(着眼点)

 担当者がリスクを感じながら仕事をしているか?問題があった場合は、誠実に問題点をつぶしこんでいるかを直接本人に聞いたり記録を確認することで言行一致が見られるかを確かめます。

全体的実施項目 2.特定の宗教、団体等の勧誘を行って組織を破壊する可能性がある人がいないかまた反社とのつながりがある人の有無を調べる

(内容)

店長や弱い立場にある人に、組織を破壊する可能性のある行動をする人がいないかどうかを聞き出します。

これらの行動は陰で細々と行っている場合にはあまり表立っての問題にはなりませんが、業務中に行ったりすると業務効率が下がりますし、人が辞めたり問題行動を起こす人が大勢出たりします。

そうならないために、店長や弱い立場に人などから噂や聞き込みをします。

(具体的内容)

①悪い交友関係を持っている人はいないか
②特定の宗教や団体の勧誘を行っている人はいないか
③特定のイデオロギーを洗脳するきらいがある人はいないか。

など。

(着眼点)

これらの項目は組織の人間関係を破壊したり会社の理念でベクトルを合わせる弊害になる可能性がありますので少しでもそのような噂や事実がある場合は早めに芽を摘み取る必要があります。

全体的実施項目 3.まとまったお金が必要で困っている人はいないかどうかを調べる

(内容)

 人は弱いもので、まとまったお金が必要になり不足している場合、魔が差して過ちを犯してしまう可能性があります。そのような人がいないかどうかを確かめるのがここでの内容です。

これはリスクの所在を確かめてもしそのような可能性がある場合は、店長にその旨を話し過ちを犯さないように会社での支援の方法を探る動きをします。店長や弱い立場の人から噂や事実を聞き出します。

(具体的内容)

①多額のまとまったお金が必要になってしまった人の有無を調べる
②サラ金を使っている噂や事実がある人はいないかを調べる
③生活が最近派手になったり高いものを身に着けだした人はいないかを調べる。

など

(着眼点)

 人間は弱いので出来心から過ちを起こしてしまう可能性があります。ここでは出来心が起きる可能性が高い人や、行動が派手でその会社の給料では無理な派手な生活をいる人がいないかを調べることでリスクが高い人を知り、必要とあらば会社でその人を助けることが出来ないかを検討するきっかけを作ることも大事です。

シェアお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
この記事の目次