【この記事の概要】
大手チェーンのように売れる立地戦略、商売の成否を左右する立地選定の基本
店舗経営ではTG近くへの出店、いわゆる「コバンザメ商法」が成功の鍵となります。鳥貴族やオリジン弁当の事例が示すように効果的な集客を可能にします。一般的にブランド力で成功したと考えられているマクドナルドでさえ、その真相は、緻密な立地戦略によって成功できる場所を選び抜き、ブランドを確立したことにあります。また、「ついで買い」を促せる立地でなければ、多くの商売は衰退の一途を辿り、開店当初に大繁盛したとしても、最終的には閉店に追い込まれてしまうのです。このように、立地戦略こそが商売の成否を大きく左右する、極めて重要な要素なのです。
立地戦略の鉄則|良い立地・ブランドを強くする立地
コバンザメ商法とTG近接の重要性
飲食店の大部分を占める100坪以下の小型店舗にとって、TG近くに出店することが最も重要です。これは、古くから「コバンザメ商法」として知られる戦略です。
コバンザメは、大型の魚であるサメの体に吸着することで、サメが捕食した獲物の食べ残しを得て生息します。つまり、自ら積極的に捕食をする必要がないのです。
これと同様に、良い立地とは、店がお客さまを獲得するための努力はしなくても、その場所に出店さえすれば、自然とお客さまが集まる立地のことを指します。まさに、コバンザメ商法は、ベストな繁盛方法と言えます
■コバンザメ商法の出店事例
・鳥貴族:大手居酒屋の近くに出店。
・オリジン弁当:セブンイレブンの近くに出店。
集客力のある既存店近接に出店することで、自社の認知度向上や顧客獲得につなげている。
もちろん、「自分の店は独自性や競争力があり、立地に頼らずとも集客できる」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。その信念は尊重されるべきですが、グローバルチェーンの覇者と称されたマクドナルドでさえも、TGが近くにない街中の店はほとんど撤退したという事実は看過できません。これは知っておいて損のないことだと思います。
少なくとも、マクドナルドは「ブランドが強かったから成功した」というのは間違いで、「成功できる立地だけを選定したからブランドが強くなった」というのが真相なのです。
この立地戦略の重要性は、飲食業のみならず、小売業やサービス業など、店舗を構えるほとんど全ての業種に共通して言えることです。
◆TGとは:Traffic Generator[英]トラフィックジェネレーターを略して「ティージー」と呼び、交通発生源の意で、人や車両の移動(交通)を発生させるもととなる場所や施設のことを指します。詳細は以下をご覧ください。

商売の成否を左右する立地選定の基本
訪問型、来店型ビジネスに共通する成功への絶対条件
現代社会において、消費者ニーズは多様化の一途を辿り、私たちの生活を支えるお店の業種もまた、目覚ましい進化を遂げてきました。かつては画一的であった店舗のあり方も、今や顧客との接点や提供する価値の違いによって、多種多様なビジネスモデルが生まれています。
これらの多様な店舗ビジネスを、顧客との接点の持ち方と提供する価値という観点から分類すると、大きく三つのタイプに分けることができます。
消費者ニーズの多様化に伴い、私たちの生活を支えるお店の業種は進化し、様々な形態が登場しました。顧客との接点と提供価値の違いに着目すると、これらのビジネスは主に、購買型来店ビジネス、技術提供型来店ビジネス、訪問型ビジネスの3つに分類できます。
■ビジネスモデル別業種分類(顧客接点と提供価値)
・購買型来店ビジネス:飲食店、コンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパーマーケット、アパレルショップ、家電量販店などが該当し、顧客が商品やサービスを「購入する」ことを主な目的として来店するモデル。
・技術提供型来店ビジネス:美容院、理容室、毛染めカラーリング専門店、エステサロン、脱毛サロン、整体院・整骨院、マッサージ店などが該当し、専門知識やスキルを持つ人が店舗で顧客に技術やサービスを提供するモデル。
・訪問型ビジネス:宅配サービス、デリバリーサービス、ハウスクリーニング、出張修理などが代表例で、従業員が顧客の自宅や指定場所へ出向き、商品やサービスを提供するモデル。
特に、購買型来店ビジネス以外の、専門的な技術や個人の評判が売上に大きく影響を与える技術提供型来店ビジネスや訪問型ビジネスにおいても、店舗や事業所の「立地」が重要であることは既に証明されています。顧客が来店しやすい場所、サービス提供の効率が良い場所を選ぶことは、商売の成否を左右すると言っても過言ではありません。
ましてや、顧客の来店を前提とするビジネスにおいては、商品やサービス以外に「その店に行く理由」が不可欠であり、それが立地です。中でも、TGに行く、あるいはTGを通るという特別な状況が不可欠なのです。
TGの近くに出店することで、顧客は日常的な行動、特に買い物やレジャーなどの「ついで」にあなたの店に立ち寄ることができます。この「ついで買い」を促せる立地でなければ、ほとんどの商売は衰退します。開店当初こそ大繁盛したとしても閉店に追い込まれます。
立地選定の基本は、まずTG、次にTG、そしてまたTGと、徹底的にTGを探し、そのTGを利用する人々が「お金を使おうとしている人達か、そうでないか」購買意欲の有無などの動機を見極めることです。これが立地を見ていく上での、基本中の基本です。
前記事で紹介した新宿御苑前の屋台経営者がそこに店を構えるのも、この原則を理解しているからです。
ただし、立地が良いからといって営業努力が不要になるわけではありません。地域No.1を目指す経営者の店であれば尚更です。「良い立地に出店すれば、あとは何もしなくても良い」と主張しているわけではありません。良い立地と積極的な営業努力は、車の両輪のように不可欠なのです。
また、今回「100坪以下の店舗」を例に挙げましたが、現在では500坪クラスの大型小売店においても、TGの有無が売上に大きな影響を与えることが分かっています。特に郊外のロードサイド店舗においては、「橋」となるTGの存在が非常に重要で売上に大きな影響を与えます。
まとめ:立地戦略と立地選定
店舗ビジネスにおける立地戦略の重要性を小型店から大型店、来店ビジネスから訪問型ビジネスまで幅広く解説しました。
成功の鍵は、TGの行動を的確に捉え、そのそばに出店する「コバンザメ商法」にあります。マクドナルドの事例は、立地戦略の最も重要な意味を示唆しています。
単に良い場所に出店するだけでなく、TGの質や購買意欲を見極めることが不可欠です。ただし、立地はあくまで成功の第一段階であり、その潜在能力を最大限に引き出すためには、絶え間ない営業努力が不可欠です。
現代においては、店舗規模に関わらずTGの存在が売上を左右する要因であり、緻密な立地戦略こそが競争優位性を確立する上で決定的な要素となります。
