【この記事の概要】
多くの人が関わるビジネスだからこそ「安心安全な店づくり」
店舗経営では、商品やサービスの販売提供時にはお客様と現金など金銭の授受が生じます。その金銭授受を行うのは正社員に関わらず高校生、学生などのアルバイト、主婦らのパートなど多種多様な人が対応しているため「お金」の管理がとても重要になります。血と汗と涙の結晶である「お金」。そして、身近で生活にかかわる「お金」は、人の人生を左右し、店舗経営にも重大な影響を及ぼす可能性があります。その大切な現金の監査方法について解説します。
多くの人が関わるビジネスだからこそ「安心安全な店づくり」
店舗経営では、商品やサービスの販売提供時にはお客様と金銭の授受が生じます。そして、その金銭授受を行うのは正社員に関わらず高校生、学生などのアルバイト、主婦らのパートなど多種多様な人が対応しています。
そのような中で従業員やお客様にとって「安心安全な店舗」づくりが必要になります。
そこで今回は、店舗経営の要諦でもある『現金』について、レジ周りのお釣りと売上金の現金、金銭の授受、小口現金とバックマネー(金庫)にフォーカスした監査の要点をご説明します。
お金に関しての重要なポリシーと現金監査の必要性
お金に関しての重要なポリシーは「店舗経営や運営では、できる限り現金や換金性のある物は取り扱わせない」ことが前提になります。
その理由は、現金の授受では防犯カメラ撮影などを除いて記録が残らないことが多いため、不正は現金や換金性のある物を記録外で行なわれるからです。
防犯カメラが身近になった昨今でもレジの記録を操作して現金の横領などの不正が後を絶ちません。ハードは不正の抑制機能はあるものの100%防ぐことはできません。全てはソフト、人によって決まるのです。
詳細は、以下を参照してください。

そのために会社のルールとして原則、「現金の授受は行なわせない」「現金は怖い」という感覚を持たせて徹底する必要があります。
ですから販管費に関しては最低限の限度を決めて厳格に管理させることとし、商品売買に関する現金の授受ではレジのお釣り、レジの記録と残高を日々厳格に管理させる必要があります。
1.レジ周りの現金管理の監査
(1)お釣りと売上金の管理
店舗運営においてはお釣りが各金銭ごとにお客様に迷惑をお掛けしないように不自由なく用意されていることが重要です。そのため、毎日開店時には釣り銭準備金が各金種ごとに常備すべき金額が確実に準備されていることを確認して、その日の営業がスタートしているかを確認する必要があります。
お釣りの監査項目
店舗ごとの決められた釣り銭準備金は、前日の閉店責任者が釣り銭準備金を用意し、翌朝の開店責任者が再度、金種ごとの金額を再確認した上で営業がスタートしているかを確認します。その際に、金種ごとに途中の不足有無、不足数量を確認して当初の準備数量が妥当かどうかを確認します。
つまり、釣り銭準備金の総額と金種別在高、保管方法などは閉店責任者が売上金の集計と共に、二人が関わり、それぞれダブルチェックを行います。そして、翌朝の開店責任者は前日閉店時の管理状況が適正かどうかを二人が関わってダブルチェックをするのです。
そして、釣り銭に加えレジ売上金の確認は、閉店時や開店時などでも時間帯責任者らが二人が関わり、それぞれのダブルチェックによって最低でも各時間帯で2人×2回=4回のチェックがなされ、適正な管理がなされているかを確認することも必要です。
一般的にお釣りの金種別必要量は統計的に一定の範囲に収まりますので、監査員は従来のルールで良いかどうかの確認も行ないます。またおつりの補充ルールが守られているかを監査します。
売上金の監査項目
まず、店舗経営における現金として取り扱うべきものは釣り銭や現金に加え、電子マネー、クーポン券、落とし金、現金差や不明金などとします。
その中の売上金管理は主にレジ集計で行います。営業中と閉店時のレジ集計と売上金と釣り銭の値、返金処理件数と金額の値と実施者名を確認します。
現金差、落とし金や返金処理を確認するのはレジ不正に直結するため確認は必須です。
売上金の金庫保管や入金は、会社のルールに則って実行されているかを確認します。売上金は多額になるため、魔が差す機会になりがちで、「ギャンブルで儲けて、元手はそっと金庫に戻せばいい」との軽い気持ちから結果、大損をして発覚するケースなども多いからです。
このようなシステムのもと時間帯責任者に現金管理を任せられる範囲は、営業時間帯、開店業務から閉店業務へと順を追って権限委譲の範囲が広くなり、それぞれの時間帯の管理状況を牽制できるような管理業務の履行状況を監査します。
(2)金銭授受の正確性の監査
レジでの金銭の出し入れは商品のみに限り、販管費関連の小口現金の授受とが分けることが大事です。そして商品周りの金銭授受が正しく行なわれており、日々各店舗で毎日正しさの確認と、もし差異があった場合はその原因追及が行なわれており解決されているかを監査します。
レジ金銭の差異の原因は、カウントミス(数え間違い)、計算ミスと転記(入力)ミスがほとんどで、それ以外の場合、さらなる究明が必要になります。
よくあるのは、レジから現金を持ち出して買い出しに行ったり、領収書を入れて現金を抜くといった行動で、本来、売上金と釣り銭を管理するレジで小口現金の出納をしているケースがありますが、前述の通り、レジから小口現金であっても現金を抜く行為はミスや不正の元になるのでおすすめできません。
お金の管理は個人で完結させると不正の温床になりますので扱う人と記録者は分けるとか、レジ打ち者と管理者は別の人が担当することとして、毎日金額を合わせることが必要です。それがルール通りに出来ているかを監査します。
2. 小口現金管理の監査
小口現金は商品以外の現金の授受を扱います。監査の要諦はルール通りに運用されているかどうかと、毎日管理者が残高の正しさを確認して、領収書や出金伝票などの証憑類と出納記録が全て合っているか、出納基準や仕分けルールや計上方法は正しいかなどを確認します。
また管理者が一定時期に管理してその記録が妥当であるかを確認します。一般に小口現金の動きは全体からすると少なく、金額も少額である事から不正が行なわれるリスクが少ないと捉えられがちで管理が甘い場合が多く、逆に不正に手を染めるきっかけにもなりがちなのでルール通りの運用が出来ているかを中心に監査します。
3.金庫管理の監査
金庫では現金に加え、現金扱いである金券やクーポン券を保管します。金券やクーポン券が休憩室などの金庫以外で保管されていることがよくありますが、不正につながるので禁止事項です。
金庫管理は金庫保管の現金類をカウントして証憑に記入後に、引継ぎ者立会いの下で確認をして、双方が証憑にサインをして金庫の引継ぎは完了します。閉店と開店と立会いが困難な場合、開店責任者は閉店責任者の金庫管理が正しいかを確認できてから次の業務に進むことが可能になります。
金庫の施錠は、人の退職や異動が多い店舗経営ではシリンダー錠とダイヤル錠での二重ロックが重要です。シリンダー錠は簡単にコピーができてしまうのでダイヤル錠との併用をし、シリンダー錠の鍵番号と使用者や所持者の把握とダイヤル錠の開錠番号の変更を人の退職や異動時や定期的に実行しているかなどを監査します。
一見、便利なデジタル錠は故障の場合、緊急対応が困難なので注意が必要です。
運用面では、ダイヤル錠の開錠番号を教える際は口頭で行い、メモ書きなど紙に書くことは禁止です。ダイヤル錠開錠する際も、片手でダイヤルを隠し第三から見られないようにするなど、開錠番号の管理は徹底します。
このように鍵を開ける人と鍵や番号を書いた紙を管理する人が別れており運用が厳重に行なわれているか、また前述の通り金庫内現金類の確認状況などの記録と運用を監査します。
現金は一円まで正確に管理することが重要ですので、そのような意識で適正な運用管理されているかを監査担当者は意識しながら監査することが重要です。
一般に監査は「決められた事が決められたとおりに行なわれているか」を調べることと「ルールを変える必要があるか」を調べるのが役割ですのでご自身に課せられた課題を意識して業務を行ないましょう。