稲盛和夫さんが説いた経営理念の浸透を事例、脳科学や心理学で紐解く
人、ひと、ヒト。人間は誰でも尊厳欲求が強く自分が尊重されたいし、褒められたり評価されたい。「えも言われぬ恐れ」から変化を拒む心の曲者。恐れの状態の克服。たったの1%の顕在意識を支配する潜在意識などなど。経営での問題はほとんどがこれが一歩踏み出せなかったり行動につながらない最大原因になっています。
稲盛和夫さんがさまざまな経営の問題に直面し、理念浸透のため、人のタイプを自然性、可燃性と不燃性の3つのタイプに分けて浸透工作をされ、「誰もがやる状態を作り、結局自分だけやらないことが出来ないような環境」を作りあげ、京セラ、KDDIの異なる業種での成功とJAL再建における秘話を紐解きます。
経営理念浸透の難しさ
経営理念を浸透させるのは難しいものがあります。今回は何が難しくてそれをどのようにすれば克服できるかをお伝えします。
まず難しさについて3つの点を挙げさせていただきます。
難しさ その1:「人は変わりたくない」という本質
「人は変わりたくない」ので、従来の自分の考え方や行動様式と違うものをいけ入れたくないと考えることがあげられます。
なぜかと言えば変えることは面倒でもあるし、「えも言われぬ恐れ」から変化を拒むのです。
ここで「えも言われぬ恐れ」が曲者でして、経営での問題はほとんどがこれが一歩踏み出せなかったり行動につながらない最大原因になっています。また、行動は無意識ですので無意識の恐れに支配されてる人間はなかなかそれを克服することが出来ず、“できない理由”や“やらなくともよい理由”を考えて変化を回避します。
最近の脳科学では顕在意識はたったの1%であり潜在意識が99%であることを考えますと潜在意識から無意識に沸き起こってきて行動を支配している99%を押して行動を変えることはかなり難しいと言えます。
難しさ その2:「叱られたり、矯正されたことはしたくない」という感情
「人は叱られたり、矯正されたことはしたくない」という感情がわきます。そのため、やっていただく社員から反発を受けないようにする説明や伝え方が必要になります。
ここになぜ叱られたり矯正されたくないと思うかといえば、人間は誰でも尊厳欲求が強く自分が尊重されたいし、褒められたり評価されたいと思いますので、それに反する行動をとられるとやりたくなくなるのです。
難しさ その3:「できもしない人から言われたことはやりたくない」という反発
経営計画、経営方針や会社のルールを作成して、現場の浸透させる立場の社長やリーダーが、もし社員から見て明記していることが出来ていないとすると「できもしない人から言われたことはやりたくない」という反発につながります。
結果、行動にも結びつけません。そして悪くすると「自分でできないことを押し付けない欲しい」とリーダーの弱点を突いてきて、これ以上進めさせないように言いがかりをつけてきたりします。これもやりたくないのでやらなくともよい理由を探す中で、推進者が出来ていないことを金科玉条としてつくことでやらない正当性を主張するのです。
経営理念を浸透させるためのコツ
実は、経営理念を浸透させるためには、前述のやらない理由をつぶすことがとても大事なことなのです。その解決策は次の通りになります。