真似と創意工夫
「文章がうまくなりたいんだけど……」
仕事柄、こんな質問をいただくことがある。そんなとき、私は決まって自分への諫めとして、「まずは良い文章を読むことです。そして、それを手本として書き続けることです」と答える。
おいしい料理をつくりたければ、おいしい料理を食べなければならない。美しい服を売りたければ、美しい服を着ることが必要だ。安全・安心な食を売りたければ、確かな食に親しむことは欠かせない。
より良くなりたければ、はるか高みにある最良を知ること大切だ。
単にぜいたくを勧めているわけではない。目指すべき頂上を理解していなければ、そこには行けないからである。自分が今いる場所よりも、ずっと先にいる“最良”を知り、そこへ向かって地道な努力を続ける。
結局、これこそが頂上への確実な早道であることを学んだ名言をお伝えしたい。
創意を尊びつつ
良い事は真似よ
「創意を尊びつつ良い事は真似よ」
これは「昭和の石田梅岩」と言われた経営指導者、倉本長治*の言葉の一つである。
「学ぶ」の語源が「真似る」と同じであり、「真似ぶ」とも言われていたことをご存じだろうか。「真に似せる」の意味から「真似(まね)」や「真似ぶ」が生まれ、「学ぶ」という語が生じた。つまり、真似ることは学ぶことの基本であり、真に似せることから学びは始まる。