【この記事で分かること】
「人本経営」の哲学を貫く。逆境を力に変え、社員を「人財」にする老舗経営の核心。
「困窮に瀕する毎日にもめげず」をテーマに、なぜ老舗が危機でも潰れないのか、その人本経営の核心を解説。巖手屋・小松シキ氏の壮絶な創業哲学を事例に、経営者が社員の心を守る覚悟とES(従業員満足度)向上の重要性を説く。理念浸透と信頼関係を通じて社員を人財へと進化させ、現場の知恵を活かす実践論を紹介。人を大切にする経営が、次なる「創意工夫」を生み出す土台となる。
困難な時代にこそ問われる「人を大切にする経営」
店舗経営者、そして店長の皆さんは、日々、予期せぬ市場の変化や激しい競争に直面し、まさに「困窮に瀕する毎日」だと感じているかもしれません。このような厳しい環境下で、貴社や貴店の社員は、何をよりどころにして仕事に取り組んでいるでしょうか。
商業経営の原理原則7では、ライバルをも動かす「慈愛真実の商人」の哲学、つまり商人の絆と信頼関係の重要性をお伝えしました。この絆と慈愛の精神を、店舗経営という現実の組織の中で具体的に実践し、逆境を乗り越える力に変えることこそが、今回のテーマである「人を大切にする経営」の真髄です。
短期的な利益追求に走る企業がある一方で、真に繁盛を続ける個店経営や老舗は、危機的状況下でこそ、人の心を最優先します。なぜなら、企業競争力の源泉は、揺るぎない「人財」の力に他ならないからです。本記事では、この「人本経営」の哲学をいかに組織に根付かせ、持続可能な成長と繁盛を達成するかを、具体的な行動原則と理論を交えて解説します。
危機でも人が辞めない「人本経営」の哲学と老舗の覚悟
経営危機でもブレない「社員の心を守る」覚悟
企業が困難に直面したとき、経営者が最初に取る行動が、社員の心に最も深く刻まれます。リストラや賃金カットといった即座のコスト削減策は、短期的に数字を改善するかもしれませんが、社員のロイヤリティやモチベーションという、最も貴重な「人財」を損ないます。
本当の「人本経営」(人を大切にする経営)とは、会社が最も苦しい時でも、社員の生活と心を守り抜くという、経営者の断固たる覚悟に表れます。「困窮に瀕する毎日にもめげず」という精神は、不確実性の高い現代において、社員のエンゲージメントを高める最も強力な戦略となります。


