2024年飲食の好調、不振要因
飲食店業態別、閉店倒産と繁盛の明暗
2024年の飲食店では、コロナ禍が落ち着き始めたにもかかわらず倒産件数が過去最多の870件を超える見通しが示されています。
帝国データバンクや東京商工リサーチの調査によると、立地に関係なく不振に陥る店舗が増加し、経済全体の動向だけでなく業態ごとの対応策が明暗を分けたとしています。
テイクアウトやデリバリーに注力して回復を実現した事例もある一方、人手不足や原材料費の高騰など複合的な要素が影響し、収益維持が難しい状態にあります。
そば・うどん、ラーメン、焼き肉、居酒屋やバーが苦戦
近年、FBI(外食産業の売上指標)においてはファーストフードの回復が際立つ一方で、そば・うどんやラーメン、焼き肉、居酒屋などは苦戦しています。
コロナ禍の収束で客足が戻り、飲食の客数や売上は回復にあります。一方で深夜営業やアルコール需要に依存する居酒屋やバーは、消費行動の変化と外出自粛の影響を大きく受けたままです。
また、ラーメン店の倒産件数は過去最悪となり、特に5人以下の小規模店舗が大きな影響を受けています。その原因は、原材料の高騰でラーメンの価格が上がり客離れを招いたことにあります。1杯1000円以上のラーメンを提供する店も出て、生存戦略として高級化に焦点を当てる声もあります。
焼肉店では急速に倒産が増加していますが、その要因は、円安による輸入牛肉と国産野菜価格の仕入価格の高騰、光熱費と人件費の増加にあります。
テイクアウトやデリバリー対応を強化した店舗は一部回復の兆しを見せていますが、記録的な物価高が大きく経営に影響しています。
ファストカジュアルカジュアル業態の台頭
少し高価でも価値のある商品を提供するファストカジュアル業態が台頭しています。
ファストカジュアルは、ファストフードの高回転率とカジュアルレストランやファミリーレストランの高客単価を組み合わせたスタイルで、米国外食業界で2000年代以降の一番伸びている業態です。
ファストカジュアルの特徴は、高回転率のため手頃な価格で美味しいものを提供することが可能で、特に質の高い食事を求める客層に人気があります。
食の「安全志向」や「健康志向」が求められる現代の食事では、ファストフードより少し高価でも価値のある選択肢として需要が広がっています。
ちなみに、消費者の食の志向は「安全志向」「健康志向」「経済性志向」「簡便化志向」の四つがあり「食の四大食志向」と呼んでいます。
この業態で提供している商品の特徴は、身近な日常食、または機会食を日常食にしている点です。「食の四大志向」を組み込んでいる業態です。
主なファストカジュアル店
シェイク・シャック(ハンバーガー)
ウェンディーズ・ファーストキッチン(ハンバーガー)
焼肉ライク
天丼・天ぷら本舗 さん天
いきなりステーキ
極味や(ハンバーグ)
SARIO┆聘珍樓(中華料理)
俺のイタリアン・フレンチ
地域密着型店舗の強み:ローカルニーズへの適応
ローカルニーズ(店舗商圏に住む人たちのニーズ)に応じた商品やサービスを提供する店舗は、消費者との関係を深めることで売上を安定させています。
大手チェーンではカバーしきれない地元ならではの要望に対応し、市場の隙間を埋めるビジネスを展開できるのが強みです。
価格や品揃え、広告展開なども地域性に合わせて設定し、日々の生活に密着した活動を実施すれば、リピーターだけでなく新規顧客の増加も期待できます。
地域コミュニティとの連携でイベントや集客施策を行う方法も有効で、他業種とのコラボレーションが実現すれば相乗効果を期待できます。
デリバリーサービスの進化:競争激化と顧客満足度
飲食や小売を問わずデリバリーサービスの利用が急増し、競合各社の参入で多くの選択肢が出現しています。
価格高騰や人手不足が課題となる中、配送効率を高めるシステム開発や顧客向けアプリの導入でサービス向上を図る店舗が目立ちます。
小回りの利く配達網を整えれば、忙しい顧客のニーズを満たして売上増加やリピート利用につながります。
例えば、大手ファミリーレストランチェーンのガストでは、アプリで注文を受け、店内調理、デリバリー地図と会計を連動した独自システムによって、高品質な料理をリーズナブルで迅速に提供して差別化を図っています。
一方、競争が過熱すればデリバリー効率、広告費や手数料が重荷になるケースも多いため、市場の需要を予測した適切な投資と回収の判断が重要になります。