
東京で勝つための店舗開発二つの任務
では、この厳しい東京のマーケットで、どうすれば繁盛店を生み出せるのでしょうか。
出店や店舗開発において、成功の鍵は二つの重要な任務を遂行することにあります。
上手な交渉こそ東京で勝つ必須要件
オーナーへのアピールポイント
あなたの店の客観的な強みをまとめておくこと。飲食業なら、無煙であるから建物を汚しにくいとか、電気だけでガスは使わないので火災の心配はいらないとか、床が乾燥しているので衛生状態が良く、害虫や細菌が増える心配がないなど、競合相手より優れている点を列挙できることです。
また、単なる利益だけでなく、「社会的意義」や「地域貢献性」も重要な交渉材料です。都会の不動産オーナーが個人であれば、そういった地元の住民からの評判を強く意識することが多いからです。
あなたの店と商品・サービスで、子供たちが喜び、ファミリーが来店する割合が多いなら、地域住民の減少に歯止めがかかる効果が望めます。若者に喜ばれるなら、全国に評判を広げて、多くの若者を呼び寄せる地域にできます。
マスコミの有名人や知識人がよく訪れるほどの店ならば、この点を強調しましょう。文筆家や批評家、スポーツ選手、歌手、芸人などの文化人や芸能人に好まれる雰囲気とサービスを持った店ならば、具体的な名前を挙げて説明することです。
このような客観的な強みを主張することができれば、それは単に競合相手に打ち勝つだけでなく、家賃にプラスアルファされた価値が生まれるのです。
誠意ある交渉こそ成功の鍵
こうした「強み」も言えず、交渉せずに、オーナーや業者の提示内容を鵜呑みにして、「やはり、東京は高くてだめだ」なんて言っていたら、あなたは生き残れない。オーナーに対する誠意ある交渉こそ、良い立地を獲得するための最大のポイントです。
この点は、企業の経営する店であろうと、個人の経営する店であろうと、条件はいっしょと考えてよいでしょう。もし個人で交渉して取得できなかった場合、それは「個人」であること自体が問題なのではなく、「店の業種や業態」、あるいは「交渉の内容」に問題があったと考えるべきです。
決して、オーナーは「有名だから」とか「賃料が高いから」という理由だけでテナントを決めることはありません。このあたりは、個人起業家の方も安心したほうが良いと思います。
すでに郊外のロードサイドでは、交差点の角地以外に良い立地を見つけるのは困難です。しかし、東京の駅前であれば、まず失敗することはありません。
もちろん、立地に「絶対」はありません。駅前でも、視界性評価が悪く、駅や主要な動線上から見えにくい店舗だったり、自転車などが所狭しと雑然と置かれており、店舗に近づきにくい、接近容易性が悪いこともあるからです。
競合に打ち勝つための戦略
第二の任務は、「競合に勝つ」ことです。こうした自らの立地に加え、競合=同業店の存在は大きく影響します。だから、いかにしたら、競合に勝てるかを考え、行動することがあなたの2番目の任務と言えます。
見えない、入りづらいなどのネガティブな立地・建物条件を注意深く避けたり、補強したり(例えば誘導看板を設置するなど)せずに成功できる駅前立地は、ほとんどありません。駅前立地だからといって高をくくってよい物件はないのです。
何かしらの問題点が必ずあるはずです。この問題点を見つけられず放置すれば、必ず競合する店に負けてしまいます。
繁盛店を生み出す物件の見極め方
前章で触れた「二つの任務」を遂行するために、具体的な物件の見極め方を解説します。駅前だからと高を括ることなく、物件のハードウェアとしての基準を徹底的にチェックしましょう。
物件の「ハードウェア」を徹底的に評価する
- 視界性: 駅やメインストリートからあなたの店舗がどれだけ目立つか?誘導看板などで補強は可能か?
- 接近容易性: 入り口までスムーズにたどり着けるか?雑然と置かれた自転車などが邪魔になっていないか?
- 入りやすさ: ドアや入り口は、お客様が抵抗なく入れるデザインか?
- 店内の魅力: 十分な広さ、清潔さ、居心地の良さは確保できるか?デザインの洗練性や利便性は?
これらのチェックポイントを細かく観察し、問題点を発見し、改善策を講じることこそが、競合に打ち勝つ第一歩です。
駅前以外の優良立地
東京での優良立地は、駅前だけではありません。業態によっては、以下のような場所にも大きなチャンスが眠っています。
- 大型商業施設: 百貨店、GMS(総合スーパー)、SM(スーパーマーケット)など、広域から人が集まる商業施設内。買物客やレジャー客の流入を味方につけることができます。
- 主要な動線上にある交差点: 駅からの「動線」上に位置する、人通りが極めて多い大型交差点の角地。
- 特定のターゲットが集まる場所: 予備校生や大学生が多く集まる施設周辺。大型団地群の入り口付近や、公園、河川敷の入り口など。
これらの立地でも、徹底的な調査と、オーナーとの誠実な交渉は必須です。
成功事例に学ぶ立地選定
ここでは、実際の成功事例から、どのように立地を見極めるかのヒントを見てみましょう。
都内屈指のファミレス成功事例
地下鉄水天宮駅の前にあり、交差点角地でもある。5分の徒歩商圏は北側で隣の人形町駅に達する。住民人口は2912人と少ないものの、勤め人を含めた昼間人口は男10,351人、女5,491人と合計でその5倍に達する。さらに、土日は、安産のお守りを求めて広域から多くの人々が流入します。

お台場のアクアシティ5Fにあるハンバーグ専門店
ショッピングセンターの中に出店して大成功している事例です。最大のプラス要因は、広域からの大きなレジャー流入があること。5Fは食の専門店街ですが、日祭日ともなればどこも満員で空席待ちの状態となります。

需給バランスが大きく崩れた地域:
物件は、品川駅の東口から100mほどの位置にある。周辺には、多くの高層オフィスビルが建っておりたくさんのサラリーマン・OLが勤務しているが、そのビル付設部分とこの物件のある一角にしか飲食店がない。そのため平日の昼時ともなるとどの店も猛烈な忙しさに襲われます。まさに需給バランスが大きく崩れた地域と言えるでしょう。

まとめ:繁盛への道は「東京」から「動線」へ
今回の記事では、東京というマーケットの重要性と、そこで成功するための二つの任務「物件交渉」と「競合に勝つための戦略」について解説しました。「勘と経験」に頼る時代は終わり、データと戦略に基づいた科学的なアプローチが不可欠です。
しかし、どんなに素晴らしい物件を手にしても、お客様があなたの店までたどり着けなければ、繁盛はあり得ません。
次の記事では、今回の記事で触れた「動線」を深掘りします。「TG(交通発生源)」の次に大事と言われる「動線」を見誤ったら致命傷です。お客様が店舗までたどり着く「人の流れ」をどう読み解き、どうビジネスに活かすか。その具体的な方法を解説しています。どうぞ、ご覧ください。

