「コスト増で利益が出ない」「求人に人が来ない」…
そんな切実な悩みを2025年総括と共に解決。アパホテルやコシダカHD等の事例から、最小投資で最大効果を生むDX導入法、スタッフが辞めない人材資産化の仕組み、利益確保の極意がわかります。三重苦をチャンスに変え、2026年以降も左右されない強靭な店舗体質を築く「答え」を提示します。
2025年の日本経済は、パンデミック以降の完全な経済正常化が進む一方で、歴史的なコストプッシュ型インフレと人手不足の常態化に直面した一年でした。店舗経営者にとって、これまでの成功体験が通用しなくなった「構造転換の年」であったと言えます。
本記事では、飲食・小売・サービス業の各業界における2025年の動向を総括し、2026年以降の安定経営に向けた具体的な指針を解説します。
2025年上半期における日本経済の総括とマクロ環境
2025年の日本経済を象徴するのは「名目上の成長」と「実質の停滞」の乖離です。小売業販売額は77兆6,450億円(前年同期比2.7%増)に達しましたが、その内実を紐解くと、物価上昇に伴う販売単価の底上げが寄与した「インフレ型成長」であることが分かります。
消費者の徹底した「選別」と「ダウングレード」
食料品分野では、断続的な値上げに対し、消費者は買い上げ点数の削減や安価な代替品へのシフト(ダウングレード)で対抗しました。一方で、高付加価値な体験には投資を惜しまない「消費の二極化」が決定的なものとなっています。
特にこの局面で注目すべきは、「価格の納得感」をどう構築するかという点です。単なるコストアップの転嫁ではなく、顧客が「この価値なら納得できる」と感じる情緒的付加価値の提供こそが、選別される店舗とそうでない店舗の分水嶺となっています。
具体的には、顧客の利用動機に深く踏み込んだ商品開発や、店舗での「体験」そのものを商品の一部として設計する戦略が求められています。「安さ」で勝負するダウングレード層への対応か、あるいは「意味のある高単価」で選ばれる高付加価値層への集中か。店舗はこの二極化した消費行動に対し、より明確なスタンスを打ち出す必要に迫られています。
「三つの上げ(値上げ・賃上げ・利上げ)」が直撃する店舗経営
2025年の店舗経営を最も象徴し、かつ経営者を苦しめたのが「値上げ」「賃金上げ」「利上げ」のトリプルパンチです。
- 値上げ(価格転嫁): 単純な値上げではなく、メニュー改定や深夜料金導入(松屋等の事例)による「納得感のある価値再定義」が成否を分けました。
- 賃金上げ(人件費): 政府が「2020年代中に全国平均1,500円」を目指す中、人材確保が最優先課題となっています。
- 利上げ(金融コスト): 日銀の追加利上げにより支払利息が増大。どんぶり勘定ではないシビアな管理会計が必須となりました。
国際情勢と政治経済
国際情勢とコスト構造の激変:「第二次カレーショック」の衝撃
2025年10月のカレー物価が1食451円に急伸し、過去10年で最高値を更新した「第二次カレーショック」は、飲食店の粗利益を大きく削る象徴的な出来事となりました。また、トランプ関税の発表は輸入コスト増大を招き、企業の減益要因となっています。
政治経済の転換:高市早苗政権の発足と経済対策
2025年10月に発足した高市政権は、21.3兆円規模の総合経済対策を策定。「103万円の壁」の見直し議論により、労働供給の拡大と個人消費の押し上げを図っています。店舗側もこれに合わせたシフト管理の柔軟性が求められています。


