食品偽装はなぜ繰り返される?賞味期限や消費期限改ざんの実態、誘惑と背景。再加工と偽装、誤った認識。

食品偽装はなぜ繰り返される?賞味期限や消費期限改ざんの実態、誘惑と背景|誤った再加工と偽装の認識

【この記事で分かること】
 食品偽装は経営を揺るがす! 危機を乗り越え、信頼を築く道筋とは。
 相次ぐ食品偽装は店舗経営に壊滅的打撃を与えます。事例が示すように、透明性の高い時代には信頼回復が不可欠です。賞味期限改ざん等は法的責任を伴い、SNSで企業イメージを瞬時に損ないます。しかし、品質管理の徹底、情報公開、従業員教育、内部告発制度の整備など、誠実な取り組みで信頼を回復し、経営の持続も可能になります。

この記事の目次

繰り返される食品偽装が店舗経営を揺るがす!信頼回復への道筋

 熊本の有名洋菓子店による賞味期限改ざんの事案は、その深刻さを改めて浮き彫りにしました。本来3ヶ月の賞味期限の商品を1年に張り替えて販売していたというこのニュースは、忘れた頃に報道される内容であり、その発生は大企業も例外ではありません。

2025年に発覚した、大垣市の会社がどら焼きの賞味期限を改ざんして愛知県のスーパーで販売していた不正も然り、これら事案は、世に出た氷山の一角に過ぎません。

過去には、北海道を代表する銘菓「白い恋人」の石屋製菓、伊勢名物「赤福餅」の赤福、国民的洋菓子の老舗不二家といった名だたる企業が、食品偽装の問題に直面してきました。

老舗料亭の船場吉兆のように、食材の産地偽装や使い回しなどが原因で廃業に追い込まれた例もあれば、石屋製菓、赤福、不二家のように厳しい危機を乗り越え、再建を果たした企業もあります。

食品の安全と顧客からの信頼を裏切るこの行為は、経営にとって計り知れない「罪」です。

食品偽装が招く「経営危機」と「廃業」:あなたの店は他人事か?

 食品に表示されている期限には、

  • 賞味期限(おいしく食べられる目安)
  • 消費期限(安全に食べられる目安)

の2種類があります。これは今や一般的に広まった知識でしょう。

「昔は臭いを嗅いでみて、食べられるかどうか自分で判断したもんだ」という笑い話もあながち嘘ではありません。実際、瓶詰や缶詰、飲料、乾物類などは日持ちするため、賞味期限や消費期限が過ぎても食べられることが多いものです。

焼き菓子のような日持ちする食品から、パンや惣菜のような日持ちしない食品まで、期限の改ざんは多岐にわたります。

その例として、2021年に発覚した京都の老舗ベーカリーでの業務用冷凍パンの賞味期限延長事案や、コンビニエンスストアの一部店舗での調理パン・おにぎりなどの消費期限改ざんが挙げられます。

賞味期限や消費期限改ざんの誘惑と背景

 安易な改ざんの背景には、「まだ食べられる」「もったいない」という心理や、廃棄ロス削減による利益増加の誘惑があります。

例えば、賞味期限3ヶ月の洋菓子を廃棄せずに1年間販売すれば、廃棄ロスが減り、利益は格段に上がります。「消費者にバレなければ…」と「悪魔の囁き」になびく気持ちは理解できないこともありません。

適切な再加工は合法ですが、期限切れ食材を偽って販売する行為は、顧客の安全を軽視した許されない不正です。目先の利益追求がこうした不正行為を引き起こす主な要因と考えられます。

誤解の無いように言えば、

  • 今日の夜が「消費期限」の豚肉を、その日の内に「トンカツ」にして売り切る
  • 明日までが「消費期限」のトンカツを、今日中に「カツ丼」にして売ること

これらは全く問題のない「再加工」です。

しかし、今回の事案のように、今日が「消費期限」の豚肉を明日トンカツにして売ったり、その売れ残ったトンカツを明後日カツ丼にして売ったりといった安易な「賞味期限」や「消費期限」の改ざんは、お客様が何を信じて良いかわからなくなる行為です。

透明性の時代:SNSが暴く店舗経営の不正

 現代はSNSが社会の隅々まで浸透した「透明性の時代」です。食品関連の不正は消費者の健康に直結するため、X (Twitter)などで瞬時に情報が拡散され、その影響は甚大です。真偽が定かではない情報が玉石混交ですが、中には関係者からの声も散見されます。多くの不正は関係者からの内部告発によって発覚しています。

洋菓子店でもスーパーでも外食店でも、もはや企業は「隠しごと」や「内緒話」が通用しない時代であり、不正は瞬時に明るみに出て、世間の厳しい目に晒されます。

しかし、これは決して悪いことばかりではありません。透明性が求められる時代だからこそ、企業はより一層、誠実で健全な経営を心がけざるを得なくなります。不正がしにくい環境になることは、消費者への安心と業界全体の信頼度向上につながる、ポジティブな変化でもあります。

SNS時代の「炎上リスク」と深刻な法的責任:食品偽装が招く経営破綻と代償

 賞味期限や消費期限の改ざんは、単なる倫理問題に留まらず、深刻な法的責任を伴います。主な罪としては、食品表示法違反による罰則、消費者を誤認させる不正競争防止法違反、意図的な場合は刑法の詐欺罪、そして景品表示法による規制対象となります。

これらの法的責任に加え、行政処分(営業停止命令など)や消費者からの損害賠償請求など、企業の存続を脅かす多大な影響が生じます。一度失墜した企業イメージの回復には莫大な時間とコストがかかり、最悪の場合、廃業へと追い込まれる可能性すらあります。

経営者が負う法的責任:賞味期限改ざんの重い代償

 食品偽装がなぜ繰り返されるのか──。この大きなテーマの根底にあるのは、企業の真の信用回復です。

賞味期限や消費期限の改ざんは、消費者の安全を脅かすだけでなく、企業と顧客との間に築き上げてきた信頼関係を根底から破壊する行為です。

過去の事例を見ても明らかなように、一度失われた信頼を取り戻すことは非常に困難ですし、企業の「消費期限」は、不正が発覚した瞬間から刻々と迫っています。根本的な改善と真摯な対応なくして、その存続は危ういものとなります。

一方で、厳しい批判に晒されながらも、食品偽装問題から立ち直り、事業を継続している企業も存在します。

危機を乗り越え、再建を果たした企業の事例

  • 石屋製菓: 品質管理を抜本的に見直し、ISO9001を導入し、情報開示を積極的に行いました。工場の見学ルートで透明性を確保し、誠実な対応と味の堅持でV字回復を果たしました。
  • 赤福: 製造工程を見直し、不正印字防止システムを導入することで、技術とコンプライアンスを徹底しました。幹部と従業員の意識改革を進め、消費者に真摯に向き合う姿勢を示すことで信頼回復に努めました。
  • 不二家: 外部専門家を交えた対策会議で品質管理と情報公開を徹底しました。新商品開発やコラボレーションを通じて顧客との接点を再構築し、安全優先の企業文化へと変革しました。

この再建事例は、謝罪だけでなく、抜本的な企業体質の改善、透明性の確保、そして顧客への真摯な姿勢が、失われた信頼を取り戻す上で不可欠であることを強く示しています。

「危機管理」と「ブランド力」強化のポイント:店舗経営で必須の取り組み

 食品の安全に対する意識が高まる現代において、店舗経営で必須となる「危機管理」と「ブランド力」強化のためのチェックポイントを解説します。

不正を未然に防ぎ、万が一の事態に迅速かつ適切に対応するための危機管理体制の構築は極めて重要です。これらは店舗のブランド力と顧客からの信頼を強化し、持続可能な経営を実現するための投資と考えましょう。具体的には、以下の取り組みが求められます。

  • 食品衛生監査の実施: スーパーバイザーによる定期的・抜き打ち監査や第三者機関による外部監査で、衛生・表示を厳しくチェックし、改善点を透明化します。
  • 徹底した品質・在庫管理: 先入れ先出し(FIFO)の徹底、定期的な期限チェック、厳格な温度管理と記録を行います。
  • 従業員教育と倫理観の醸成: 食品衛生・表示ルールの研修、高い倫理観の意識付け、緊急時対応ロールプレイングを実施します。
  • 内部告発しやすい環境作り: 匿名通報窓口の設置と周知、心理的安全性の高い職場環境を構築します。
  • デジタル技術の活用による管理強化: 賞味期限管理システムの導入、トレーサビリティを確保します。
  • 情報公開とコミュニケーション: 迅速かつ透明な情報開示、顧客との真摯な対話を心がけます。
  • 食品ロス削減への健全な取り組み: 正規のディスカウント販売、食品廃棄物の有効活用(飼料化・肥料化など)を推進します。

これらの対策を通じ、法令遵守だけでなく、消費者から真に信頼されるブランドを構築し、持続可能な経営を目指しましょう。

食品偽装会社の社長

商品管理と従業員教育を徹底し、再発防止と信用回復に全社挙げて取り組みます!

やまとマン社長

毎回よく聞くお詫びの言葉だが、「会社ぐるみ」なら絵に描いた餅である。会社の「消費期限」が迫っている…。

この記事は筆者が「note」に掲載した「【賞味期限の改ざんは罪…】」を要約、加筆したものです。

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